本書は約100年前にイギリスで出版されたヘロン・アレン著の "Violin making as it was,and is" の翻訳である。 原書は、昔からバイオリンの聖書とも呼ばれて、長い間バイオリンの演奏や製作にたずさわる人々の間で親しまれてきた本である。ヘロン・アレンはバイオリンも作ったようだが、製作者というよりも、むしろこの本のために一躍世界にその名を知られた人である。 原書の構成は、第1部バイオリンの歴史、第2部その理論、第3部その実践となっており、その中がさらに3章に分かれていて、いろいろと細かい説明や引用出ている。今回は、その中の第2部にあたる部分で、とりわけ、興味の集中する" クレモナ・ニスの秘密について "を中心にして訳書第一部とした。外国の楽器製作学校や現代の巨匠と呼ばれる人々のもとに弟子入りしても、その秘密は教えてもらえないというニスの秘密がここに明かにされるわけなので、ぜひ研究してクレモナ・ニスの再現が日本の中からなされることを願っている。
【目次】
- 序によせて
- はじめに(訳者序文)
- バイオリンの各部構造と名称
- バイオリンの各部寸法
第1章 バイオリンの木材と形
- バイオリンとは
- バイオリンの材料となる木
- 化学的に処理された木-木を熟させるためのさまざまな試み
- 木材の種類と品質
- 木材の裁断法について
- 形(モデル)とその製図法
第2章 バイオリンの裏・表・横
- 裏板・表板の厚み
- 横板について
第3章 バイオリンの内側
- ブロックについて
- 横板につけるライニング
- 魂柱の寸法と位置そして機能
- バスバー(力木)の寸法と位置
- いろいろなバスバー
第4章 バイオリンの外側
- エフ(f)孔について
- ネックとスクロール
- 駒について
- パフリング(ぞうがん)
- 木くぎについて
- 装飾について
第5章 ニス
- 失われた「クレモナ・ニス」の秘密
- クレモナのニスの作り方
- ニスの果たす役割
- ニスを塗る前の下塗り
- ニスの色づけの方法
- ニスの塗り方
第6章 付属品と器具
- 付属品の種類
- 糸巻
- ナット・指板
- テールピース、テールピン
- あご当て
- 弱音器(ミュート)
- 松やに
- 弦ゲージ・音叉・弦箱
- バイオリンの納い方とケース
第7章 弦について
- 弦の選択
- 震動の理論とバイオリンとの関連性
- 良い弦と不良な弦
- 弦の保存方法とその種類
- 弦の作り方
- 巻き弦、絹弦とアクリベル弦